2002/9月号

 今月はそばの脇役達の“つゆ”の中の本命の醤油について考察してみよう。
 醤油は日本人にとってなくてはならない調味料でもあり、そばを語るとき醤油の風味は絶対要件である。
 人々の移住と共に現在では醤油は世界中に広まり、英語では『SOY.Souce』と呼ばれ親しまれ、大手メーカーは米国・アジアででも生産を開始して現在ではヨーロッパでも実績を上げている。
 世界で親しまれている様子は、大塚滋氏が『しょうゆ−世界への旅−』東洋経済新報社 S56年版で詳しく記述されている。
 日本で生まれた醤油は少なくとも昭和20年までは日本独特の調味料であったが、終戦を機に世界に広がっていった。そもそも日本の醤油、味噌、酒類はいづれも醸造製造である。又、色々な食品の中で菌を使ったものなど沢山あり、これは高温多湿な我が国が加工に最も適しているのに起因するのと筆者は想像する。かつて銚子の醤油工場を見学した時の説明に、太平洋の湿度のある風と暑さがいい条件だときいたことがある。
知多半島の半田・武豊・常滑地方も味醤油、酒、酢などの醸造業が多い。所の著者の人にきくと、乾燥地は木蔭に入るとヒヤリとするが、この湿度、湿度の高いところは蔭に入ってもじっとりと汗もひかぬ、これが醸造によいと聞いたことがある。
 
 普遍的な解説書 広辞苑を紹介する
 我が国固有の調味料の一つ。甘味と鹹味(しおからい味)とを有し、特有の香気のある褐色の液汁。小麦と大豆とで作った醤油麹と食塩水を原料として醸造する。主産地は千葉県・兵庫県・香川県など、しょうゆ・したし・むらさきとも言う。

 更に、そもそも醤油のルーツは魚醤であると書物は解く。四面海に囲まれた我が国の祖先達は魚介類を塩蔵しその発行した汁(うまみが醸出)を醤(しょう)と呼び、別名“ひしお”→食物に添加して食していた。
 醤は、魚醤の他、肉醤・穀醤・豆醤等があり広く汁及びペースト状のものをアジア地帯では重用されている。
 韓国のキムチ料理に加えられる白魚の醤はその美味さを象徴している。
 それが現在の豆・麦の醤油が主流になって来たか判然とはしないが、大陸との往来が始まった奈良時代になって魚醤でない醤(穀醤・豆醤)が使われている記述がある。醤油というものが歴史的に判然としているのが16世紀である。その300年程の前、建長年間(1249〜55年)覚心と言う僧が宗に渡り経山寺味噌の作り方を紀州に伝えた。
 味噌の製造過程で桶の底の溜り液が味付けに良い事が判り、現在の醤油のもととなる。
 醤油とは「醤の油(液汁)の意味で味噌の派生調味料」と大塚氏の著書にある。
 続けての記述に
    紀州湯浅で覚心が味噌を伝えて30年後溜りを売り出す
 天正14年(1586年)・・・湯浅の赤同右馬太郎がしょうゆ百石を大阪に売る試み(売れなかった)

永禄年間(1558〜69年)・・・野田(千葉)
 天正 2年(1574年)・・・市川(千葉)
 天正14年(1586年)・・・湯浅(和歌山)
 天正15年(1587年)・・・播州竜野(兵庫)

 等々で加工が開始されたという。

 16世紀安土桃山時代から戦国時代にかけて、信長・秀吉を中心として南蛮というポルトガルやスペインとの交流が盛んとなり、西洋の文明や沢山の食物等が渡来して来る一方、庶民も味覚が洗練されて、しょうゆという国民的調味料が完成していった。
 そんな時代を経て17世紀江戸を中心にそばつゆは各地で独特な味となり、そば食文化が花を開いていったと考えられる。


【エピソード】
 日本人が外国へ旅行するとき醤油、コンブの佃煮etcを携行してゆき外国での味覚の空間を埋める事が多いと聞く。著名人達の随筆の中にもそんな話がよく出てくる。
 昭和17年パールハーバーで火ぶたを切った日米戦争の時,米国に居住する11万人余の人達は中部の砂漠地帯に強制収容させられた。その時食事は充分あったのだが醤油の味に困窮した。
 時の日本赤十字社は、その人達の為にキッコーマン醤油を1万樽贈った。収容所の人達は驚喜し醤油の樽を祭壇に飾り、手を合わせたという。
 戦後、醤油で喜んだ人達が祖国日本では食料に窮していることを知り、その恩返しに日本難民救済機関を結成して募金運動をしてLARA(公認アジア救済連盟=Licensed Agency for Relief of Asia)に発展した。
 昭和21年11月29日、LARA物資第1号は横浜港に入港した。これは日系の人々の募金による3万弗分の米や、粉ミルクであった。(当時の価値30,000×360円=約1000万円・・・今は何倍か?)筆者も小学生の頃配給所で母の代理で近所の主婦達と行列をしてララ物資を受け取ったことを憶えている。袋の中に入った、米や芋の干物が弟達家族の為になったのだなと感傷的な気分で記述〔大塚氏−(しょうゆ)〕を読んだ。

「醤油やそばつゆの作り方、成分等については別に譲ることとする。」

 



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