2002/5月号


 日本人の食生活は四季の恵みがあって季節毎に旬の食べ物を楽しむ事が出来る。野菜で言えば、春は山菜、夏は瓜類、秋は果実、冬には採取出来る珍しい物を食卓に出す。
 蕎麦も例にたがわず、秋そばといって収穫季節であり、秋の蕎麦粉を秋新≠ニいい、街のそば店で「新そば」始まりましたとシーズンインを告げる。そばは秋物は勿論おいしいが、保存状態もよくなり他の季節でも楽しむ事が出来る。
 世界的にも食物の種類の多さは日本が誇るもので、春夏秋冬に様々な食卓を賑やかす料理を考え出してきた。
 それでは、そばの12ヶ月について諸文献に出ているものを紹介してみよう。

 例1 中公新書513 「そばや今昔」 ※堀田平七郎編
     氏は、神田 やぶそばの当主である
 
 例2 毎日新聞社刊 「日本の蕎麦」に、鈴木啓之氏(氏は増音様のご当主)が紹介している。
     これは雷門のやぶ提供という
 
 例3 大村のれん会刊行の小冊子に、12ヶ月(毎月2種類)の蕎麦が載っている。




例1 例2 例3−1 例3−2
1月 そばとろ あられそば 力 そ ば 鯛切りそば
2月 天ぷらそば てんぷらそば 花 巻 わかめ切り
3月 白魚そば 白魚そば 白 魚 蓮 切 り
4月 花巻そば 花巻そば 甘茶切り 木芽切り
5月 茶 そ ば 茶 そ ば 茶 そ ば 山菜そば
6月 ざるそば ざるそば さらしなそば 鳥 切 り
7月 さ ら し 更科そば ざるそば ゆかり切り
8月 磯 雪 とろろそば 天ぷらそば 笹 切 り
9月 月見そば 月見そば 月見そば 海老切り
10月 松茸そば 松茸そば とろろそば 菊 切 り
11月 おかめそば おかめそば おかめそば みかん切り
12月 あられそば 鴨南そば 鴨南そば ゆず切り

例3は季節の魚や香の植物等を練り込んだりする、いわゆる変わりそばが盛込まれている。

 以下、代表的な例2or例1を選んで季節を賞味してみよう。
 
〜蕎麦の12ヶ月〜

<1月 あられそば>
  小貝柱(青柳)、貝柱が白い“あられ”に見立てられ浅草海苔の上に乗せて食べる。ネギを使わずワサビでどうぞ。

<2月 天ぷらそば>
  江戸時代に天ぷらのけんどん屋台が出現した。現代でも犬も一般的、江戸つゆに天ぷらをのせた風味は抜群である。江戸前で採れた芝えびが代表的であったとか。

<3月 白魚そば>
  日本の沿岸で採れる体長8〜10cmの小魚で焼海苔を敷き、茹でた白魚をのせる。やはり江戸前料理の工夫であろう。

<4月 花巻そば>
  かけそばに焼海苔を荒ほぐしをしたものをかける。ノリは磯の花といい、そばに海苔を花に見たてての風流なそば。ネギを使わず、ワサビの風味で・・

<5月 茶そば>
  そばに抹茶を練り込んで、茶の風味を出す。静岡の郷土そば。江戸でも明治中期、東京・団子坂の「薮」で茶そばで一杯が流行ったと言い伝えられている。5月の新茶で涼味感のある食べ方

<6月 ざるそば>
  立夏を過ぎるといよいよ暑さの訪れで、さっぱりとした喉ごしの良いざるそば≠フシーズン。ワサビや、辛味大根で夏の醍醐味を楽しんでみて下さい。

<7月 更科そば>
  夏には白≠ェ似合う。白い更科そばをざる・もり≠ナ喫食することは涼味感満点。

<8月 とろろそば>
  猛暑が続くと食欲も落ちる。夏バテ防止に土用丑のウナギを食べる。そばのメニューにとろろそば≠ェ登場するのも至極当然。昔から自然著等は滋養用として重用されて来た。食欲不振でもとろろそばは活力を回復させてくれる。

<9月 月見そば>
  中秋の明月、月見そばはまさにピッタリ。新島 繁氏の蕎麦辞典そのままを紹介する。『温かいそばの上に四つ切りの海苔を敷いて卵を乗せたのち汁を張る。卵の白身が汁の熱さに白雲のようにかえり、海苔の夜空にくっきりと黄身が月を表わす。青味を見越の松に見立てて、青ユズを添えると、秋の味わいとなる。』

<10月 松茸そば>
  錦秋の味覚の代表は何と言っても松茸=B時代と共に松茸の収穫量は激減して輸入ものが多くなって少し淋しい。しかし、あのシャキシャキした白い松茸がそばつゆとしっかりなじみ、まさに横綱級の秋味である。

<11月 おかめそば(阿亀蕎麦)>
  幕末、下谷七軒町の太田庵の創作と伝えられている。再び新島辞書から。『具でお多福の顔に仕立てた。湯葉を蝶型に結んで両眼と、鼻は松茸又は三つ葉、顔はカマボコ2枚左右に合わせて頬に作り、口は椎茸を用いた』
  片倉康雄氏は述べている。おかめの主役は松茸、島田湯葉(蝶型に結んだ湯葉)であるという。

<12月 鴨南そば(鴨南蛮そば)>
  合鴨とネギを種物にしたそば。鴨肉で長ネギを焙めて、煮立てたたね汁にいためたネギと薄切りの鴨肉を入れる。味が整ったら盛り付け、粉山椒を振る。これは合鴨のくさみをとる。〜片倉 康雄氏〜
  南蛮とは室町時代より渡来した人、物、料理の冠称に使っている。ポルトガルその他南方から来た人達は、日本で物を口にする時殺菌効果のあるネギを併せ食べたとか。その種の食べ物にネギが多く使われている。
  鴨南蛮は1800年代、江戸のそば店が考案したという記述がある 〜新島蕎麦辞書典32頁〜 冬のそば食では、鴨南そばは横綱格であることは確かである。


  以上12ヶ月のそば≠味わってみた。どれもいかにも日本的で、季節感があり、美味感を覚えるのは我田引水すぎるでしょうか。

  どうか皆様もそば≠フ味覚を満喫して下さることをねがっています。



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